2.「 4つの言い切れない」がシステム企画を堂々巡りにする

2.「 4つの言い切れない」がシステム企画を堂々巡りにする

堂々巡りになるシステム企画には4つの「言い切れない」が存在します。

それは、
(1)今やるべきかが言い切れない
(2) 実現可能性を言い切れない
(3) 本当に最善の方法なのか言い切れない
(4) 議論を尽くしたと言い切れない
です(図3)。

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(1)今やるべきかが言い切れない

「待てばもっと安くなるのでは、もっと良い方法が出てくるのではないか?」といった問いに「今やるべきです」と答えられない場合です。

この要因は自治体のシステム企画で必ずといっていいほど発生するものです。
他の要因は解決できても、これが解決できないという状況も多くみられます。

情報システムは技術の変化が早いため、あっという間に新しい手法が出たり価格が安くなったりするため、他の事業と比較してこの要因が起こりやすくなります。

この問いに答えられないことで、さらに検討をすることになり、検討をしているうちに新しい技術が登場し、さらに検討をするということを繰り返してしまうことになります。

(2) 実現可能性を言い切れない

「本当にできるの?上手くいかないのでは?絶対に大丈夫?」といった問いに「できます」と答えられない場合です。

この要因は扱うプロジェクトの規模が大きくなればなるほど発生しやすくなります。

特によく起きるのは、システム企画での検討や計画作成をコンサルティング会社やベンダーに丸投げしてしまったため、企画の担当者がその計画でプロジェクトが進むイメージを具体的に持つことができていないというときです。

その状態で計画の説明をすると、問われたことに対して「この場合はこうなので大丈夫です」と自信を持って反証できない状況に陥ります。
企画の担当者である立場の人間が自信をもって説明できないままでは、当然ですが、もっと検討しましょうということになってしまいます。

(3) 本当に最善の方法なのか言い切れない

「 ○○市がやった方法では駄目なの?なぜこの方法なの?」という問いに「これが最善の方法です」と答えられない場合に起こります。

ITに精通していない部門や管理職以上の役職の人が、ある日突然言い出すような形でよく起こります。

特にストレートコンバージョンやノンカスタマイズのパッケージ導入といった一見すると費用が安くみえる方式は、事例として引き合いに出されることが多くあります。
システム再構築の目的が曖昧な場合にこの要因が起こりやすくなります。

この問いに答えられないことで、さまざまな事例を総当たりで検討することになり、検討要素が膨れあがり進まなくなってしまいます。

(4) 議論を尽くしたと言い切れない

「立場の違いによって生じるさまざまな疑問や意見が受け入れられない」、または「疑問や意見を言った側がそれを受け入れてもらえていないと感じてしまった」ことにより、さまざまな場面で意見の対立が発生し進まない場合です。
先ほど述べた情報化部門内の意見対立などが典型的な例です。

システム管理部門の疑問や意見は、これまでの経験から導き出されたもので、的を射た内容が多くあります。彼らの知見なしでは、仮に事業に着手できたとしても、無理な計画によるプロジェクトの難航やシステム稼働後の運用が考慮されていないといったように、開発計画に実効性がないということになりかねません。

単に意見を受け入れるだけでは、検討要素がふくれあがって進まなくなってしまいますが、かといって受け入れなければ、さまざまなタイミングで何度も同じ疑問や意見が出され、進まなくなるという厄介なジレンマに陥るわけです。

ここまで挙げた4つの「言い切れない」ですが、これらを解決する方法はあるのでしょうか。
札幌市の事例を振り返ってみると、解決に繋がった共通のポイントがあることに気づきました。

それは「原点に立ち戻る」ということです。

「原点に立ち戻る」とは、「システム企画の検討を自分事として捉えること」、そのうえで「自分たちのシステムやシステムが対象とする業務、それらを取り巻く自治体の状況といったものを改めて深く理解する」ということです。

原点に立ち戻ることで「このままで良いのか」、「本当はどうあるべきなのか」、「そこに至っていないのはなぜか」、「どうすればよくできるのか」ということを深く考え、答えを導き出すことにつながります。

さらに、その過程でシステム企画や今後のプロジェクトを実施するために必要な知識を習得することもできます。そしてそれらは「やらなければならない」「自分たちがやるのだ」という覚悟になっていきます。

「原点に立ち戻る」ことによって、「言い切れない」を「言い切る」に変えていくことができるのです。