3.1「進め方はこのレベルまで詳細化する」

3.1「進め方はこのレベルまで詳細化する」

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図4をみてわかるとおり、業務フローを初めとする成果物ができあがるまでには、作業の目的や内容の異なるたくさんの作業から成り立っていることがわかります。

このプロジェクトは、受託者に業務知見の高い作業者がいたことに加え、業務マニュアルやシステムの設計書といった資料が豊富に存在していました。

ここで紹介する進め方は、そのような状況を踏まえ、熟練者が比較的精度の高いドラフトを作成し、それをチェックするパターンを採用しています。

発注者側のチェックは大きく2つ、赤入れチェックと現場ヒアリングに分けて実施します。
これまでのプロジェクト運営で、ヒアリングは議論が発散しやすく、また沢山の関係者を拘束してしまうことから、可能な限り最小限とするのが効率的なプロジェクト運営につながることが分かっていました。

そこで、習熟したベンダーの作業者が作成する比較的精度の高いドラフトの成果物へ赤入れチェックを行い、可能な限りヒアリングを行わずに修正できるところまで成果物の品質を高めます。
この後でヒアリングでなければ難しい内容について、業務担当者にヒアリングを行うことで成果物を完成に近づけます。

ヒアリングの作業はさらに二段階に分かれます。最初に、市全体としての標準的な業務について、業務所管部門の担当者にヒアリング(プレヒアリングと呼んでいました)を行い、成果物の品質を高めます。
その後、区ごとの業務の違いやレアケースなどに絞った確認を行う目的で、区担当者を交えたヒアリングを行って成果物を完成させます。

なお、この例においてドラフト作成する日数よりも赤入れの日数のほうが長くかかっているのは、ベンダーのほうが発注者側に比べ人数が多いためです。

図4の進め方のうち、「ドラフト作成」の部分を例にあげると、「①成果物作成」では、ベンダーの担当者が、あらかじめ品質管理者が作成したチェックリストを用いつつ成果物を作成します。

それを「②チームレビュー」で、担当者以外のメンバーは、作成担当者と同じ視点で第三者チェックを行い、チームリーダが、チーム内の成果物品質の均一性や整合性の確認を行います。

その後、「③成果物修正」を経て、「④内部レビュー」を行います。
内部レビューでは、業務アナリストやシステムアナリストが、より深い業務・システムの知見に基づき品質を確認するだけでなく、機能一覧と業務マニュアルを突合わせするといった方法で業務分析の結果とシステム分析の結果を突合せて品質確認を行います。品質管理者は進め方や作成したチェックリストなどが有効に機能しているかという視点で品質を確認し、チーム全体へ横展開するといった作業を行います。ここまでの作業を経て、次の作業である発注者が赤入れ可能な品質の成果物が完成することになります。

このレベルまで進め方を明確にすることで、作業が漏れなく洗い出されているか、洗い出された作業の作業期間や作業量は妥当かといったことが確認できるようになります。

また、提出される成果物がどのような品質で提出されるか、発注者が確認を行わなければならない観点はどういうものかといったことも明確になります。

もし、実施段階で進捗に遅延が見られたり、提出された成果物が想定した品質を確保できていないといったことが起きたりした場合は、ここで詳細化した進め方のどの部分がうまくいっていないのかを発注者側・受注者双方が確認できるようになります。

ベンダーが対策を提案してきたときも、発注者としてその対策が妥当であるかを確認することができるようになります。