4. 脳がショートするくらいまで考え抜く

4. 脳がショートするくらいまで考え抜く

ここまで、「原点に立ち戻る」ことの重要性と利点、そして、「言い切れない」を「言い切る」に変えるための方法について紹介してきました。

「原点に立ち戻る」には「システム企画の検討を自分事として捉えること」ことが重要だとお伝えしましたが、そのためには「脳がショートする」くらい必死で考え抜くことが必要です。

私たちがプロジェクトをここまで乗り越えてこられたのも、システム企画の時期に日夜議論を重ね、議論のあとは頭の中がパチパチして、まるで脳がショートするような感じがする程に考え抜いた日々があったからだと感じています。

調査や検討の一部を委託するなど、手を動かすことは誰かにお願いしても良いのです。
しかし、検討の全体像を自らが把握し、考えることを放棄してはいけません。

必死で考え抜くことで、はじめてシステム企画の検討を自分事として捉えることとができるようになるのです。

「トップダウンがあればできるのではない」

「札幌市さんはトップダウンだからできたのですね。羨ましいです。ウチはそうじゃないので検討が進まなくて・・・」

ある自治体の方が視察に来られた際に、そのようなことを言われました。

確かに当時の市長のトップダウンの意志は、強力な後押しではありますが、それだけでは堂々巡りから抜け出すことはできませんでした。

原点に立ち戻り、現行システムを取り巻く状況をしっかり調査したことで、現行システムを継続して利用するにも莫大な費用がかかること、その費用をかけたとしても遠くないうちに稼働限界が迫っていることがわかりました。

そして、今までできない理由と思われていたことも、次々と解決策が見つかり乗り越えていきました。

「お金がない」「単年度に莫大な費用がかかる」という課題は、契約形態の工夫による経費の平準化を思いつくことで乗り越えました。
「人がいない」「プロジェクトを運営していく人を集められない」という課題は、当初の人員要求の半分でプロジェクトを回すというPMO体制によるプロジェクト運営方法を思いつくことで、乗り越えていきました(PMO体制によるプロジェクト運営については、次回の連載のなかで紹介します)。

「プロジェクトの困難を乗り越える力になる」

事業はやると決めてからが本番です。

やると決まったら今度はプロジェクトの立ち上げが待っています。
プロジェクトの立ち上げはそのあとのプロジェクト運営の品質を大きく左右することにもなる重要なものです。

プロジェクトの立ち上げ期は、生まれたてのベンチャー企業のようなものです。数少ないメンバーが膨大な作業をこなしながら進めていく必要があります。

メンバーが同じ方向を向いて生産性高くやらなければ、プロジェクトがうまく立ち上がらず、スタートからつまずいてしまうことにもなります。

この立ち上げを上手く行うには、価値観を共有した組織やチームの存在が非常に重要です。
原点に立ち戻ることは、再構築を進める上で前提となる知識を把握することだけでなく、組織やメンバーの価値観を統一することにもつながるのです。

「おわりに」

原点に立ち戻ることは、堂々巡りのシステム企画からの脱却の糸口になること、そして、企画段階だけでなく実施段階においても重要だということをお伝えしました。

これは、次回のテーマである「マルチベンダーでのプロジェクト管理」を行うなかでも重要な要素です。

次回は、このマルチベンダーでのプロジェクト管理について、札幌市がどのような工夫をしているか紹介します。