4.規模が大きい場合や複数プロジェクトが並行するとき

4.規模が大きい場合や複数プロジェクトが並行するとき

基幹系システムを全て再構築するような場合は、プロジェクトの規模がとても大きくなります。

そのようなプロジェクトは、1つ1つのプロジェクト規模も大きくなり、複数ベンダーによるプロジェクトが並行して走ることにもなります。]

プロジェクト規模が大きくなると、プロジェクトで起こった問題は品質や進捗に大きな影響を与えることになります。また、複数プロジェクトが並行して走っている場合、あるベンダーの遅延がほかのベンダーにも影響を及ぼすことになります。

成果物が提出され品質がおかしいと思った時にはすでに大量の成果物が作成されリカバリ不能な状況になることや、わずか1日の遅延が何人月の工数損失になるといった悲惨なことが起こってしまいます。

大きなプロジェクトを行う場合は、進め方の組み立てや発注者が気をつけるポイントについて十分なノウハウを持った発注者側のメンバーを沢山集める必要があります。
しかし、現実としてはそのようなメンバーを多くそろえるのは困難です。

これまでの連載で解説したAIST包括FWのようなグラスボックス化された仕組みがあれば、ノウハウの乏しい職員でも発注者主導を実現できるようにスキルの底上げを行ってくれますが、それでも再構築規模のプロジェクトを行う際には経験豊富な人材が不可欠です。

「PMO体制によるノウハウの活用と一貫性の確保」

札幌市のシステム再構築プロジェクトでは、プロジェクト開始2年目のメンバーが急速に増えるタイミングで、単一のプロジェクト管理の体制から、PMO体制でのプロジェクト運営へと移行しました。

プロジェクトの立ち上げから参画していたメンバーをPMOチームに配置し、個別プロジェクトのプロジェクト計画作成と進捗確認に深く関わるようにしました。

ノウハウを持ったメンバーが進め方の検討やプロジェクト計画の作成に参加することで、どこで問題が起きそうかといったことを先回りした検討を行うようにしました。

また、複数の個別プロジェクトにPMOが入ることで、プロジェクト間のスケジュールの整合性や横並びでの品質確保、システム企画の時に作成したプロジェクト全体の思想を個別プロジェクトに浸透させ、一貫性のある活動をとるようにしました。

 PMO体制での反省点としては、PMOはあくまで計画作りに参画し、その後の運営は個別PJに任せる形をとるつもりが、PMOメンバーが思い切って個別PJを信じて任せ切ることができず、そのままプロジェクト運営に参画してしまい、個別PJメンバーの成長機会を奪ってしまうといったことが起こりました。

運用以降の次世代を担う職員を育成する意味でも、序盤は介入するにしても、徐々にファシリテート程度にし、最後は信じて任せていくということが必要です。

プロジェクト運営に人材育成という要素をもっと入れることができれば良かったと考えてています。

「おわりに」

プロジェクト計画は、これまで紹介したようなレベルまで進め方を練ることで、はじめて実効性のある計画になります。
また、実効性のある計画を作るからこそ、進捗管理や品質管理といったプロジェクト管理が機能します。

プロジェクト管理が上手くいかないと思われているときは、ぜひ進め方に目を向けてみてください。

今回、事例紹介のなかで要件分析工程進め方の例を挙げましたが、次回は、要件分析そのものをテーマにして、意義や成果物作成にあたって気をつける点などについてお伝えする予定です。